quantale's diary

日々の数学/物理等の読書記録

Finite-Dimensional Vector Spaces: Second Edition

Finite-Dimensional Vector Spaces: Second Edition (Dover Books on Mathematics)

Paul R. Halmos (著)

 

Coodinate-Freeの立場から書かれた線形代数テキスト。

原著はSpringer UTMシリーズで親しまれてきたが、Dover出版社から再販されている。

 

線形代数には著者の哲学表れることが多いが、この本はまさにそれである。有限次元固有の箇所もあるが、多くの部分は無限次元、すなわちヒルベルト空間にそのまま当てはまる。

 

「Coodinate-Free」という言葉は聞きなれないかもしれないが、抽象的な代数として線形空間線形代数を規定し、それらの具体的な表現として数ベクトルや行列を考えるというものである。(と、私も大学院生時代にT大の超博学な学生Kさんから教わった。)

 

多くの本は数ベクトルや行列から始まるが、本書では抽象論が続き、双対基底などの考え方が出てくるが、現代数学の立場からは自然な展開の仕方である。

 

一方で初学者にはおすすめしない。具体例(数ベクトル、行列など)を中心とした一般的な線形代数をマスターし、余力がある方や、理論的に線形代数のより高い位置からの整理をしたい人、もしくは(私の場合であるが)Halmos先生の哲学を学びたい人向けである。

  • Dover版が安い。
  • ボロボロになるまで熟読するにはSpringer, GTMシリーズのハードカバー版がおすすめ。
  • 電子版はKindle版も持っているが、フォントが厳しいためお勧めしない。一方で、Springerから直接PDF版を購入することができ、こちらは原著そのままのページを画像化しているため、おすすめ。