quantale's diary

日々の数学/物理等の読書記録

3次元極座標のLaplacian(第1版)

 

3次元極座標のLaplacian(第1版)

  • date: 2020/10/18
  • author: quantale

1. 概要

 
3次元曲座標のLaplacian表示についてMatlabを用いて公式の証明を行う。
 

2. 検証環境

 

3. 3次元極座標のLaplacian表示公式

 
変数変換
に対して
 
が成立する。
 

4. 証明の指針

 
本公式の証明には
  • 方法1: 座標変換の公式から直接計算する。
  • 方法2: 微分形式により計算する。
がある。
「方法1」は前提知識がほとんどないが、証明が非常に冗長になる。
「方法2」は証明が短くて済み、さらに一般形まで示すことができるが、「微分形式」の前提知識が必要となる。
本稿では、初等的な方法により、Matlabを用いた計算を行う
  • 方法3: 「方法1」をMatlabにより計算。
を採用する。
 

5. 証明

 
滑らかな上の関数fについて
を示す。
ここで左辺をLHS(Left-Hand-Side), 右辺をRHS(Right-Hand-Side)と表し、LHS=RHSを以下示す。
連鎖律(Chain-Rule)より
行列で表すと
ここで
と置き,
と表すと
close all; clear; clc; % 初期化
syms x y z; % シンボリック変数x,y,zを定義
syms r theta phi real; % シンボリック変数r,theta,phiを実数型として定義
syms f(r,theta,phi); % シンボリック変数r,theta,phiの関数としてfを定義
x = r*sin(theta)*cos(phi); % xを極座標系で表す
y = r*sin(theta)*sin(phi); % yを極座標系で表す
z = r*cos(theta); % zを極座標系で表す
J = jacobian([x;y;z], [r theta phi]); % 上記Jacobian行列
L = diag([1 r r*sin(theta)]); % 上記対角行列L
U = inv(L) * J.'; %#ok<MINV> % 上記行列U
このときUは直交行列, すなわち (ここで I は恒等変換) を満たす。実際,
simplify(U.' * U)
ans = 
simplify(U * U.')
ans = 
となる。したがって, 。これを用いると
よって xyz-座標系での偏微分-座標系での偏微分の線形結合で表される。
のxyz-座標系での第k成分を と表すと
となる。ここで fを代入することで-座標系での偏微分の線形結合によりを表現できる。同様にも表現できる。
Nab_f = U.' * inv(L) * gradient(f); %#ok<MINV>
Nab_f = Nab_f(r,theta,phi);
D2f = sym(zeros(size(Nab_f)));
Df2(1) = subs(Nab_f(1),f,Nab_f(1));
Df2(2) = subs(Nab_f(2),f,Nab_f(2));
Df2(3) = subs(Nab_f(3),f,Nab_f(3));
左辺(LHS)として の和としてLaplacianを計算する。
LHS = sum(Df2);
右辺(RHS)として各項とその和を求める。
term1 = diff(r^2*diff(f,r),r)/r^2;
term2 = diff(sin(theta)*diff(f,theta),theta)/(r^2*sin(theta));
term3 = diff(f,phi,2)/(r*sin(theta))^2;
RHS = term1 + term2 + term3;
LHS-RHSを計算して
simplify(LHS-RHS)
ans(r, theta, phi) = 
0
によりLHS=RHSが示された。▮

Reference

  • [1] M.Ito, 量子力学がわかる, 技術評論社, 2010.
  • [2] K.Shiraishi, 絶対わかる物理数学, 講談社サイエンティフィック, 2007.
  • [3] T.Oguni, K.Kenichi, MATLAB数式処理による数学基礎, 朝倉書店, 2004.

 

フーリエ解析と関数解析学 (数学レクチャーノート 基礎編)

 2020.10.18 

「新・フーリエ解析関数解析学 」が最新版であるが、

現在廃版のため、中古価格が高騰している。

ひとまず旧版であるこの本を購入した。

 

現代の「フーリエ解析」として、完璧なストーリー展開である。

 

立ち止まってみたときに見える「フーリエ解析」は百科事典のように味気ないが、

本書は今現在の「フーリエ解析」の生きている姿に肉薄したドキュメンタリ―を見ているようだった。

 

Wavelet、量子力学との接続等のみならず、和書であまり書かれていないFrame理論も書かれている。それらが単純なコレクションとしてではなく、有機的な結合として総体をなす様子が描かれている。

 

それら個々の応用ついては、それぞれが1冊の専門書となるほど広がりを持っているが、おおまかな接続関係をたった1冊のBookletで把握できるのはなんといっても痛快である。「新・フーリエ解析関数解析学 」の再版が待ち望まれてならない。

 

Differential Equations and Their Applications: An Introduction to Applied Mathematics

2020/10/06

6章を中心に読了。

6章ではStrum-Liouville 境界値問題が丁寧に解説されている。

これによってLegendre, Hermite, Laguerre多項式微分方程式による特徴づけを統一的な観点から行うことができる。

Strum-Liouville については天下りな定式化が多い中、常微分方程式論として非常に自然な論理展開をしている。

また、場当たり的な解法解説本が多い中、関数解析学との接続を意識して統制のとれた書き方を平易に丁寧にしている。面白い。 

 (F)

群と表現 江沢 洋 (著), 島 和久 (著)

(2020/10/05)

物理の観点から書かれた群の表現論。

実例が面白い。

群と表現 (岩波オンデマンドブックス)

群と表現 (岩波オンデマンドブックス)

  • 作者:江沢 洋,島 和久
  • 発売日: 2015/12/10
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
 

 (練図)

Hilbert空間における完全正規直交系(CONS)の構成例(第1版)

 

Hilbert空間における完全正規直交系(CONS)の構成例(第1版)

  • date: 2020/10/02
  • author: quantale

1. 概要

Hilbert空間での具体的な完全正規直交系(CONS)の構成例を, Matlabの計算とともに示す。

2. 検証環境

3. Legendre多項式

 

(1) 多項式

 
と定める。
について関数 の概形を示す。
close all; clear; clc; % 初期化
syms t % シンボリック変数tを定義
% グラフ出力
fplot(power(t,0:4)); axis([-1.2 1.2 -1.2 1.2]); grid on;
xlabel('$t$','Interpreter','latex');
ylabel('$t^n$','Interpreter','latex');
legend('$1$','$t$','$t^2$','$t^3$','$t^4$',...
'Location','best','Interpreter','latex');
title('fig1. $x_n(t) = t^n$','Interpreter','latex');

(2) 多項式系のGram-Schmidt直交化

 
は線形独立であるから Gram-Schmidt の直交化法が適用できる。
実際に最初の5ステップを計算する。
% 変数と基本処理関数の定義
sym t; % シンボリックに変数tを定義
x = @(n) t^n; % x_n(t) := t^n
d = @(v,w) int(v*w,-1,1); % 内積計算処理
nrz = @(x) x/sqrt(d(x,x)); % L^2ノルム正規化処理
% Gram-Schmidt直交化法で最初の5項を計算
syms p0 p1 p2 p3 p4;
p0 = nrz(x(0));
p1 = nrz(x(1)-d(x(1),p0)*p0);
p2 = nrz(x(2)-d(x(2),p0)*p0-d(x(2),p1)*p1);
p3 = nrz(x(3)-d(x(3),p0)*p0-d(x(3),p1)*p1-d(x(3),p2)*p2);
p4 = nrz(x(4)-d(x(4),p0)*p0-d(x(4),p1)*p1-d(x(4),p2)*p2-d(x(4),p3)*p3);
p0 ,, p4 について簡約後, 出力
p0 = simplify(p0)
p0 = 
p1 = simplify(p1)
p1 = 
p2 = simplify(p2)
p2 = 
p3 = simplify(p3)
p3 = 
p4 = simplify(p4)
p4 = 

(3) Legendre多項式系との関係

 
Legendre多項式
を用いると先の p0 ,, p4 は
の形をしている。実際に比較すると
phi = @(n) sqrt(sym( (2*n+1)/2) )*legendreP(n,t); % phi_nとおいた。
simplify(phi(0)-p0) % phi_(0)-p0を計算
ans = 
0
simplify(phi(1)-p1) % phi_(1)-p1を計算
ans = 
0
simplify(phi(2)-p2) % phi_(2)-p2を計算
ans = 
0
simplify(phi(3)-p3) % phi_(3)-p3を計算
ans = 
0
simplify(phi(4)-p4) % phi_(4)-p4を計算
ans = 
0
となり結果は一致する。
そこで改めて
と定めると, これはからGram-Schmidt直交化により得られた正規直交系(ONS)と一致し, となる。
について関数 の概形を示す。
% グラフ出力
fplot(phi(0)); hold on;
fplot(phi(1));fplot(phi(2));fplot(phi(3));fplot(phi(4));
axis([-1.5 1.5 -1.5 1.5]); grid on; xlabel('$t$','Interpreter','latex');
ylabel('$\varphi_n$','Interpreter','latex');
legend('$\varphi_0$','$\varphi_1$','$\varphi_2$',...
'$\varphi_3$','$\varphi_4$',...
'Location','best','Interpreter','latex');
title('fig2. $\varphi_n(t):=\sqrt{\frac{2n+1}{2}}\cdot P_n(t)$',...
hold off;

(4) 完全正規直交性

 
得られた正規直交系(ONS) が完全正規直交系であることは以下のようにわかる。
区間 の点を分離すること等からStone-Weierstrassの定理([4], p.146)より ノルムについて稠密となる。ノルムについて稠密である([4], p.244)。よってで稠密となる。
一般にHilbert空間の正規直交系(ONS)について, その線形結合の全体をで表すと,
で稠密 完全正規直交系(CONS)
がいえることから(Hiai,Yanagi p.7), の完全正規直交系(CONS)を定める。

4. まとめ

 

5. 展開

 
  • 関数列にGram-Schmidtの直交化法を適用することでLaguerre(ラゲール)多項式による完全正規直交系 を構成することができる。
  • 関数列にGram-Schmidtの直交化法を適用することでHermite(エルミート)多項式による完全正規直交系 を構成することができる。

Appendix A. Note

Appendix B. Reference

 
  • [1]H.Umegaki, 情報数理の基礎 - 関数解析的展開 - , サイエンス社, 1993.
  • [2] F.Hiai, K.Yanagi, ヒルベルト空間と線形作用素, 牧野書店, 1995.
  • [3]T.Oguni, K.Kenichi, MATLAB数式処理による数学基礎, 朝倉書店, 2004.
  • [4]G.K.Pedersen, Analysis Now, Revised Printing, Springer, 1995.
  • [5]T.Kawazoe, 群上の調和解析, 朝倉書店, 2000.
  • [6]S.Mizazaki, 関数解析, 横浜図書, 第3版, 2014.