quantale's diary

日々の数学/物理等の読書記録

はじめての群論

はじめての群論

斎藤正彦 著

 

斎藤先生の群論入門。

ざっと1日で読む、つもりが真面目に2日間で読みました。

 

「はじめての」でありながら、極力「self-contained」となるように、そして初心者の躓きやすいポイントをケアしながら、と様々な心遣いが感じられます。

(多くの学生が躓く、または、見落とす「well-defined」などもきっちり述べています。)

また、多くの代数学の教科書では淡々と定義、補題、定理が続きますが、この本ではどこに向かっていくのか、(さらりとですが)モチベーションを示しながら進めるところが素晴らしいです。

 

多くのamazonレビュワーが言うように、初心者一人では難しいかもしれませんが、指導者がいる場合、大変良い本だと思います。

 

一人で読む場合は、記号論理学や集合論について、もう少し別の本で慣れてから、一つ一つの「(やさしい)」を自分で解きながら、演習問題も解きながら読み進めると、

大変力がつくと思います。(集合論のいい練習問題にもなります。)

 

斎藤先生の長年の教育経験が生かされ、のびやかに、しなやかに、美しく群論が展開されていきます。

 

おすすめです。

 

A MATLAB Companion for Multivariable Calculus by Jeffery Cooper

A MATLAB Companion for Multivariable Calculus by Jeffery Cooper

 

多変数解析のMatlabを使った副読本。

以下、気をつけるべき点

  • Symbolic Math Toolbox が必須
  • 昔のSymbolic Math Toolboxのため、当該依存箇所は手作業で書き換えが必要。
  • 著者固有のツール群に依存する記載(特に矢印等の表示系)が多く、汎用性が低い。
  • 理論的な部分の記載はどうしても薄いため、メインのテキストにはならない。

しかし、彼の記述は何とか可視化しようという強い意志が感じられ、

これらの「気をつけるべき点」はそれに比べればとっても小さい。

味気ない多変数解析に彩りを加えてくれる一冊。

 

最新のMatlabであれば、LiveScriptを使いながら、本書の記載を自分用にアレンジ

して書くこともできる。

(だれか、そういうスタイルで教科書を書いて欲しいなぁ、と思ってます。

 最近はやりのJupyterもいいですが、やはり本家のMatlabは記述能力が高いです。)

 

量子力学がわかる

量子力学がわかる

 

量子力学が明快に解説されています。

こんな授業を学部のときに受けたかったと思えます。

井戸型ポテンシャルのシュレディンガー方程式を解いたり、

学部でのスタンダードな話題かと思います。

気軽に知って、楽しむのにぴったりです。

 

ベクトル解析と微分形式

ベクトル解析と微分形式

 

薄くて、実用的で、内容が濃い井田先生の本。

 

通常は微分形式の教科書は数学的に厳密すぎ、

位相、多様体テンソル代数、、、

微分形式にたどり着く前に体力を消耗していしまいます。

 

しかし、この本では形式的な計算を真似していくと、

その効用が最短で実感できるように構成されていて、

全体像の把握をするのに向いています。

 

実解析でのストークスの定理が簡単に導くことができ、

複素解析での コーシーの積分定理も一般的な複素解析の本より

簡潔に示されます。

 

実用家、物理系の方だけでなく、数学系(Spivakよりまずこちらかも)にも

おすすめです。(入手しづらい点が惜しいです。)

 

(出版社の東洋出版は既に倒産してしまいましたが、

 この本、どこかから再版して欲しいです。)

 

フーリエ解析の展望

フーリエ解析の展望

 

全体をざっと読む。

 ぺーリー・ウィーナーの定理等、フーリエ解析に関する各種定理が共通的な視点から、無限回連続微分可能関数、シュワルツ超関数、佐藤超関数と、一般化されていく様子が痛快。(証明の省略はもちろん多いが。)

 

量子場の数理

量子場の数理を23年ぶりに読む。

明快な解説はさすが。
作用素環による量子論の記述ではGNS経由で具体的なHilbert空間表現に繋げることができる。
対称性と量子論理の関係も面白い。

[Keywords]
・Gleason's theorem
・GNS

2020/09/01-2020/09/02