MATLAB数式処理による数学基礎 (日本語) – 2004/1/1
小国 力 (著), 小割 健一 (著)
(2020/09/23)
2004年刊行であり、Matlabコマンドとしては一部推奨記述に変えていくべきところもあるが、今でも十分検証に耐えうる内容である。
細かい関数仕様はHelpやWebの情報源を見ればよいが、本書では数学の基本的なことを程よく網羅的に選び、ハンディな本にまとめてくれている点が非常に良い。
数式をコネコネするときに、手計算のみという人は実際少ない。著名な数学者でも、実際はMathematicaやMatlabで緻密に調べた後、仮説を立て、証明をしている。しかし、実際に論文を書く際にはこれらを表に出さない。
Mathematicaは長らく数学者に愛用されているツールであるが、コード記述量が比較的多く、書き始めるまでの「どっこいしょ感」が強い。
一方、Matlabはインターフェースがシンプルで、すぐに書き始め、数式処理やグラフ描画することができる。
試行錯誤をするときには、シンプルに考え、簡単な初等関数から具体例を構成する場合がある。こういったとき、Matlabに加え、本書のようなハンドブックがあると、実例を参照しながら最短の時間で目的を達成できる。
【注意点】
・Symbolic Math Toolboxが必須。
・Matlabコマンドとしては一部推奨記述に変えていくべきところもある。
・Matlab開発元であるMathworks社は、Maple社とのライセンス契約解消後、
MuPad買収し、フロントエンドを保ちつつ、内部の数式処理カーネルをMupad
ベースに変更。このため、Mapleゆずりの高度な代数演算は利用できなくなった。
これらにもかかわらず、現状「なんとかなる範囲」であり、本書の活躍の場面は続いていく。
測度・確率・ルベーグ積分 応用への最短コース 原 啓介 (著)
測度・確率・ルベーグ積分 応用への最短コース 原 啓介 (著)
(2020/09/20)
書店で気になっていたが、日曜日の朝晩で完読。
やはり「最短コース」と言われると数学の立場からワクワクする。
- 無駄をそぎ落とし、手早く骨子を説明。
- 込み入った証明は省略。
- 確率論への測度論的アプローチについて優しく導入。
- 実務上主要な定理は網羅している。
- 具体的な計算例もほとんど記載がないため、他書での演習が必要。しかし、理論構成を明確にする意味ではこのアプローチは正解だと思う。
Hilbert空間における射影作用素を用いて、L^2の「条件つき期待値」をL^1に拡張する手法について、Williamsの本を引例に出して言及している。こうした要素は確かにModernな感じがする。
Williamsの本は、私の大学院時代、統計の院生の間で流行っていたが、日本語訳が出ていること、そしてその翻訳者の1名がこの著者であることを今回知った。
著者のページ
https://sites.google.com/site/keisukehara2016/home/works/meas_prob_lebesgue?authuser=0
(練図)
量子計算理論 量子コンピュータの原理 森前 智行 (著)
量子計算理論 量子コンピュータの原理 森前 智行 (著)
「第1章 はじめに」に前提知識についての記載があり、
『実は、量子計算の研究するには、学部レベルの線形代数と確率の基礎的な知識と、
後は量子論や量子計算の独特な用語や慣習に対する慣れだけあれば十分。』
とのことです。
学部の物理全般くらいは必要かな、と漠然と思っていましたので、
ここの一文は大変驚きました。
確かに第1章~第3章はこれらのみで読めました。第4章は詳しくは、Nielsen-Chuangを見てね、とのことで、簡潔な量子ゲートの例のまとめが展開されます。
Nielsen-Chuangは結局、量子力学の入門から解きほぐしますので、量子コンピュータの入門としては上記引用の前提で良くても、途中からは「物理」そのものといいますか、「量子化」のプロセスの理解が必要になってくるように思いました。
それ以降の章は大変発展的な内容です。
今週、この分野について、ある先生の素晴らしい講演を聴きました。その質疑では『Nielsen-Chuangは学部生等で時間が無限大にあれば読んでね』とのことでした。というのも、Nielsen-Chuangは初版が2000年であり、その後の発展もあるため、現時点からいうと、新しいテキストが必要になるだろうとの見解です。
しかし、「新しいテキスト」をただ待っているわけにもいきません。
学生時代はNielsen-Chuangの分厚い本に圧倒されていましたが、今は翻訳本もオーム社から手軽に入手できますので、まったくもって『無限の時間』に縁のない社会人の私も、Nielsen-Chuangをざっと読んでおこうかなと思ってます。
群論への30講 (数学30講シリーズ) 志賀 浩二 (著)
群論への30講 (数学30講シリーズ) 志賀 浩二 (著)
(2020/09/14)
学部の頃以来、久々の再読。
入門としては、有限群に絞ってシローの定理等にフォーカスし、構造論で終わる本が多い中で、本書は応用上重要な位相群、またそれを含む群の表現論の入り口まで一気に案内してくれる。
志賀先生の題材の選定に悩む様子はよく理解できる。
(本書では省略されているが)調和解析では、コンパクト群や局所コンパクト群の設定でHaar測度を考えていく。群、位相、測度の相互関係が織りなす美しい世界がある。代数学の一般的な講義ではこれらの世界の入り口はもちろん、雰囲気すら触れられず終わる。
(アーベル群を中心として)有限群の構造の説明を最低限し、それとのアナロジーで調和解析につながる世界の入り口まで案内してしまう手腕はさすがである。
#1~2日くらいで読むつもりが、会社での教育受講の予復習と並行してしまい、4日で読了。。。反省。
リー群の話 (日評数学選書) 佐武 一郎 (著)
リー群の話 (日評数学選書) 佐武 一郎 (著)
2020/09/12(土)
1週間ほど、他書と並行しつつ再読(学部、大学院時代以降、何度目になるだろう。。。)。付録を除く本文を完読。
リー群は様々な切り口があるが、この本は俯瞰してくれるのが嬉しい。
# 早くVaradarajan本に戻らなくては。。。
(練図)